松田響輝は刑事が帰って行ったあと、何かが引っ掛かっているので、自分の部屋でしばらく考え込んでいた。二人の刑事は意味ありげな表情を浮かべたまま、何も言わずに帰っていった。(わからない……。美鈴さんがあの俳優が社長のご令嬢と婚約したことに、激怒していたこと。それを話していたのが、美鈴さんのマネージャーさんだといったとき、明らかにニヤリと嫌な表情をした。)
その時父がノックをして部屋に入って来た。
「少し話があるのだが今いいかな。」
「ええ大丈夫です。」
「さっき刑事が言っていた話だが、美鈴さんがあの俳優の妹だという話だがどう思う。」
「どうって言われても、ただ信じられないだけです。」
僕はそう答えた。
「そうだよね。でも美鈴さんがあの俳優が、社長のご令嬢と婚約することに激怒していたというのは、美鈴さんのマネージャーさんが話していたのだよね。他にはそう言っていた人はいないのかな。」
「週刊誌が少しそんな記事を載せていたと思いますが……。」
「でもそれは美鈴さんのマネージャーさんが流したのじゃないのかな。」
「そうかもしれませんね。」
「結局、そんな噂を流しているのは、美鈴さんのマネージャーさんが言っているだけかもしれないね。」
「えっ!お父様それはどういう意味ですか。」
「いや、ちょっと思っただけだが、本当は美鈴さんがマネージャーさんに、そんな話をしていなかったのじゃないかなって思っただけなんだ。もしかしたら、あの俳優さんが社長のご令嬢と婚約したことで、美鈴さんが激怒していると思い込んだのか、あるいはあの俳優さんと社長のご令嬢と結婚して、大金を得ようとしているのを、美鈴さんも共犯だとしていて、わざとそう言ったのか。」
「そんな……。それじゃ……。この事件に美鈴さんのマネージャーさんが関わっているみたいじゃないですか。」
父はなにも言わずに松田響輝の目をじっと見つめていた。