服部弁護士は由美子の父親が言った言葉に不服そうに言い返しました。
「武中雄太氏は別荘にいるというアリバイを作って、松田響輝さんを殺しに行ったのです。だからホテルの前で女優に話しかけられ、時間をとられるなんてことは、彼にとっては思ってもいないハプニングだったことは間違いはない。わざわざホテル内で女優の服装を確認しておくなんて、リスクの高いことはしませんよ。」
服部弁護士の言っていることにも、確かに合理性はあるように思われた。
「そうかもしれませんね。それじゃあ服部弁護士さんは、誰が犯人だと考えているのですか。」
由美子の父親はそう聞いた。
「私は犯人が誰であるかについては、わかりませんし興味はありません。私は考えるのは武中雄太氏が犯人ではないということを証明することだけです。他のことには関心がありません。」
「そうですか……。」
「こちらに伺ってお話をお聞きできて良かったです。やはり武中雄太氏をホテル内では見ていないということがわかった。」
服部弁護士は満足そうにそう言うと、帰り支度を始めました。その様子を見て由美子は慌てて質問した。
「あの武中雄太氏をホテルの近くで声をかけた、女優さんって誰ですか。さっきから気になっていて……。」
「ああ、まだ話していませんでしたか。その方はこの写真の女優さんです。」
服部弁護士はそう言いながら、カバンから写真を一枚出して、テーブルに置きました。その写真の女優を見て、由美子は顔色を変えました。
「この方は……。」
「由美子知っている方なの?」
由美子の母親はそう聞いた。
「ええ、この方は先日の松田響輝さんの退院パーティーの時に、松田宅に招かれていた女優さんの一人です。確か三年前の事件で、弟さんが亡くなったって言っていました。」
「そうですか。この方は結城沙織という実力派で、最近人気が出てきたようです。弟さんが亡くなったて言っていたのですか。それじゃあ三年前の事件のアイドルの恋人が、彼女の弟さんなんですね。」
服部弁護士は淡々とそう言った。
「結城沙織も怪しいですね。美鈴さんと武中雄太氏に恨みを持っているみたいだし、もしかしたら美鈴さんの事件に関係あるのかもしれませんね。」
由美子の母親は服部弁護士にそう言った。